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祖父の死の話4(放浪記493)

 

火葬

 

葬式の後は、近所の火葬場へ運ばれて荼毘にふす。

数時間かけて焼いた後は、祖父の亡骸は両手で救えるほどの遺灰のみとなった。

人の一生とは儚いものである。

 

僕がインドへ行って帰ってくるたびに、生前の祖父は自分もインドへ行ってみたいと言っていた。

 

僕は、この遺灰をみて、祖父の亡骸をインドへと連れて行くことを決意した。

生身の祖父をインドに連れていっては、1週間ほどで死んでしまうだろう。

 

だが、既に死んで遺灰になった祖父であれば、バックパックに詰めて連れて行くことができる。

次にインドに行く時には、インドの聖者たちと同じく、ガンジス河へと流してあげよう。

 

僕は強い決意を持って祖父との別れの時を終えた。

 

 

祖父の秘密

 

我が家の家系はギャンブルと借金に呪われていたが、それは祖父も同じだった。

祖父の場合はパチンコが人生の全てだった。

 

2ヶ月に一度、年金を受給されると、朝イチでパチンコ屋の前に並び、数週間のうちに全てを使い果たす。

次の年金までの残りの日々を、ジクソーパズルをして時間を潰すという老後を過ごしていた。

 

家族の誰もが祖父のパチンコ狂いを問題視していたが、それでも借金をしていないのが救いだと考えていた。

 

だが、それは勘違いだった。

祖父の死後に発覚したのだが、祖父は死ぬまでずっと何十年も借金を背負い続けていたのだ。

 

その借金額は常に30万円ほどで、借りては返し、返しては借りをずっと定期的に繰り返していたらしい。

その理由の一つは祖父のだらしなさがあるのだが、それ以外にももう一つの理由があった。

 

実は、消費者金融の事務所で働くおばさんが、祖父のお気に入りだったらしいのだ。

祖父はそのおばさんに二ヶ月に一度会うために、借金をずっと引き伸ばしていたらしい。

 

暗い話の中にも何だかほっこりする話である。

 

この話は、祖父が死んだことで表に出てくることになった。

 

 
 
 

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