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日本へ帰国する話12(自叙伝168)

 

手紙


とびの仕事を始めてすぐの頃に、インドのゴアで出会った女の子から手紙が来た。

 

当時はまだEメールなどが一般的ではない時代。

旅人同士が交換するのはメールアドレスやフェイスブックのアカウントではなく、実家の住所と実家の電話番号だった。

その交換した実家の住所へ宛てて手紙が来た。

 

一つ年上で同じ市に住むIちゃんとその友人とは僕がゴアに到着したての頃に出会ったが、彼女たちはすぐに別の街へ旅立ってしまい、深く知り合うことはなかった。

だが、同じ市の出身と言うこともあり、日本で会えたら良いねと、住所を交換して別れたのだ。

 

届いた手紙は真っ黒の画用紙に銀色のペンで文字が書かれており、おしゃれな感じがする。

日本に帰って来ているのなら一緒に遊ぼうと言うような手紙が、プリクラの写真とともに送られて来た。

 

女の子から手紙を貰うなど初めての事だったので、何か気恥ずかしくも嬉しかった。

しかも何となく女の子っぽさをアピールしているのも氣になるところだ。

 

 

共有

 

手紙には携帯電話の番号が書いてあったので連絡すると、僕から電話が来た事を喜んでくれている。

お茶でもしようと言う事で会う約束が決まった。

 

彼女の家は僕の仕事場から自転車で20分ほどとそこまで遠いわけではないので、空いてる時間を見つけて会いに行った。

インドで会っていたのは二日ほどで、大した話はしていなかったが、お互いにインドの旅の感覚を共有できたので話が弾んだ。

 

僕も彼女も若くしてインドの素晴らしさや旅人の世界の自由な空気を体験したものの、日本では周りにその体験を共有できる人はおらず、祖国で家族に囲まれていつつも、ある種の孤立感を感じていた。

 

僕たちは、日本の閉塞感に対する文句を言い合い、ルールだらけで堅苦しい社会を嘆き、電車で見かける死んだ魚の目をした人たちを悲しんだ。

僕たちはこのように感じているのは自分だけじゃ無いと言う事を確認し、感覚を共有出来ることを喜びあった。

 

僕たちはその後も定期的に会って、共に時間を過ごす。

僕は、働き始めていたので時間にあまり余裕がなくストレスを感じていたが、IちゃんはOL時代の貯金と実家暮らしのゆとりで働かずとも楽に暮らしていた。

 

そのゆとりの差が逆に良かったのかもしれない。

僕たちはお互いが癒やしになり、時間とともに愛し合うようになって行った。

 

 

 
 
 

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