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北アルプスの山小屋で働く話2(放浪記443)

 

中継小屋

 

中継小屋へ着くと、Mさんという口髭を蓄えた陽気なお兄さん/おじさんが出迎えてくれた。

満面に笑みを浮かべて、暖かく話しかけてくれる。

こんな感じの人なら一緒に働いてみたいと思わせるような気持ちのいい人間だ。

 

Mさんは、もう何年も中継小屋の支配人を続けているらしい。

 

彼はすでに僕とIちゃんが旅をしていたことを耳にしているらしく、旅の話を聞いてくる。

それもそのはずで、Mさんも実は相当な旅人で、10年以上も夏は山で働き、冬は世界を旅するという暮らしをしている旅の先輩だった。

 

僕が過去に行った土地の話をすると、大体のところを理解したらしく、ニヤついている。

 

僕はその顔を見て、彼も相当旅しているんだということを理解した。

 

 

本格登山

 

中継小屋で昼食をご馳走になってから、登山を再開する。

 

ここまではケーブルカーで荷物を運んでもらえたが、ここからは自分の背中に担がなければいけない。

自分の背中に荷物を担いで登り始めたことで、その実態を理解した。

荷物を担ぐのと担がないのとでは、その辛さは何倍も変わってくる。

 

さらに単に荷物が重いだけではなく、山の中腹まで来たことで、酸素が薄くなっている。

その上で、山にはまだ溶けきっていない雪が積もっていた。

 

1時間前には結構楽かもと思っていたが、その思いは完全に覆された。

 

重い荷物、薄い空気、慣れない山歩きで滑りやすい雪の上を歩く。

 

登山慣れしたツアー客のご老人方はもともと荷物が小さくて最小限の物しか持っていない。

それでも雪山に備えたアイゼンなどの装備は整えている。

 

登山の前半では余裕風を吹かせていたが、後半は立場が完全に逆転した。

 

自分の荷物の重さを呪う。

 

 

山小屋

 

重たい荷物を背負い、汗だくになり、意識が遠のきそうになりながら雪山を登りきったところに山小屋はあった。

 

この時ほど自然の中にある人工物をありがたいと感じたこともない。

 

とりあえずこれで一旦は登山から解放される。

荷物の重さが想像以上で、完全にバテきっていたが、兎にも角にも登り切ることができた。

 

これで最初の壁を乗り越えたことになる。

 

 
 
 

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